むきだせ日常

いつか死ぬ

理由なくどこまでも歩いてしまう

最終的に徒歩が最強



自転車は上り坂に差し掛かった途端、己が金属の塊であることを主張してくる。

私の自転車がイオンで買った一番安いママチャリで、一度回転しながら転倒してしまいボロボロになってしまったせいでメタルへの退行が止まらない。



メンテナンスを怠りチェーンが一度完全に外れた際もまた、台風が来始めた空の下朝5時に「わああああ」と叫びながら転倒した。

動かない自転車とボロボロの自分にトドメの雨が平等に降りかかり愉快なほどの無力。コンビニ店員さんに心配され渡されるティッシュとアルコール。

後日「絶対に助ける!!!」とチェーンを巻き直し油を注し直した。

私の管理が覚束ないせいで自転車がかわいそうだ。



歩く話だった。

徒歩の良いところは駐車や駐輪を経由せず目的地に直行できるところ。最低限ポケットにスマホと多少の現金、家鍵を突っ込めば身軽で自然と楽しくなっちゃう。

この間スーパーに身一つで鶏肉を買いに行った。袋が有料のスーパーだ。

鶏肉以外特に買うものもなかったのでセルフレジで会計を済ませ保冷の氷と一緒に無料のビニール袋に入れた。

したがって、鶏肉をひけらかし路上を歩く者になる。

鶏肉をひけらかし路上を歩く者にはデリカシーがあったので、前を歩くカップルから鶏肉を隠しながら早足でそれを抜かした。

鶏肉のパックを持って道を歩く時、どんな持ち方が正解なのかわからなくてコロコロ持ち直していた。

時にはクラッチバッグのように、時にはウェイターのように、時には小学校で卒業証書を受け取り席に戻る時のように。正解を真摯に求めた。

歩きではそこそこ遠いスーパーから家までの帰り道、人類にはまだ分からないことがいっぱいあるなあと思った。



目的地を決めず散歩に行くと、どこで引き返したらいいか分からない。体力の限界と飽きが来るまで前進が止まらない。

止まらないが、帰り道というものがある。

散々歩いた後、帰り道がある!とびっくりする。



今朝、夜勤明けパン屋で買ったチーズフランスを食べながらテロテロ歩いて帰った。

駅に向かう人とすれ違いながら、これから1日を始める人間と1日を終える人間が交差して面白いなあと考えていた。まばらにいるハトが地面を突き何かを食べていた。

この季節は椿の花があちらこちらに咲いていて、道を逸れてその主張しない匂いを嗅ぐ。

猫の鳴き声が聞こえたら、すぐに足を止める。

近所の家の柿が日を追うごとにどんどん熟れていくのをはらはらと見守る。

なんかいいなと感じることがたくさんあって、歩くのが好きだ。



とりとめがないことをだらだら書いたけど、まとめると明日からのヒプマイ歩数バトルの意気込みです。帰り道少し遠回り…………。

20歳の時作ったラムレーズン

冷蔵庫にラムレーズンしかない。



現在22歳、卒論真っ盛りの大学4年生である。

買い込んだ3パック100円のうどん最後のひとつを午前10時に醤油をかけて食べたきり何も口にしていない。

冷蔵庫にあるのは、両手にこぼれ落ちるほどの、ラムレーズン。



一年生の11月に大学の宿舎を出てアパートに引っ越した。

それまで住んでいた宿舎は6畳に洗面台が一つ。備え付きのでかいベッドが生活空間を圧迫し、一階だったため防犯上鉄格子が組まれていた。

コインシャワーが10分か9分で100円。トイレ台所は共用。もちろん賃料はかなり安かった。はじめての学生飼育キットのごとくだった。



飼育キットから抜け出しプライベートな空間を手に入れた大学生は総じて妙なチャレンジを試みるが、私の場合はラムレーズンだった。

サーティワンのラムレーズンや六花亭のレーズンサンドが大好きだ。好きな食べ物を心ゆくまで食べたい欲望は誰にでもある。自分で作ればいっぱい食べれるぞというパッションが、一人暮らしブースタによって引き起こされた。

ちょうど20歳になってすぐだったのででかいラム酒を買い、レーズンを大量に買い

レーズンを湯で油抜きをし、瓶を消毒し

インターネットの文字に従いながら狭い台所、出来上がった大量のラムレーズン。

一週間ほど置いて一粒食べ、苦いぞと思った。

今でこそだいぶ酒を飲めるようになったが、20歳1ヶ月には辛い。

最初こそアイスに混ぜたり、チーズと食べたりしていたが一回の消費量は微々たるものだ。

冷蔵庫の奥に鎮座したでかい瓶とだんだん疎遠になっていく。

うちの冷蔵庫は小さい。父に最低100Lのものにしろと言われたのに金が無くて小さいものを買ったからだ。

「ラムレーズンがなければ……」と恨みがましく手に大きめのタッパーを持ち冷蔵庫の前にしゃがみこむ日も幾度とあった。

自分で生み出したものを憎みながらも、気まぐれに蓋を開けてかき回すこともあった。そうするといいとインターネットで見たからだ。

苦い印象が強かったので、たまに砂糖も追加していた。

でも、食べなかった。



清潔な瓶の中でひたひたのラムに浸かるレーズンたちは、静かな冷たい場所にときどき訪れる災害をなすすべなく受け入れていた。ただそれだけのやるせない毎日を過ごす干し葡萄たちの焦りと不安、諦めがアルコールの底に沈んでいく。



私もだ。私だってそうだ。あの瓶をどうしようかと生活の端で毎日憂いでいた。

干し葡萄だけが悲劇のヒロインだと思うな。管理職にだって辛いことはあるんだぞ。

お互いいがみ合ってそっぽを向いていては、手を取り合えない。まず顔を合わせよう。



2年間の空白を、これから埋めよう。



朝は「おはよう」と、夜は「おやすみ」を必ず。



一緒にディズニーに行こう。



こんなにそばにいるのにできなかったことを全部。



あなたのためだけに、冷蔵庫を開けよう。



2年も待たせてしまったラムレーズンを食べるためにクラッカーなどを求めこれからコンビニに行くが、うっかり普通に夕飯を買ってしまうかもしれない。

そのときはごめん。

f:id:mukidashinoebi:20181129190946j:plain 追記 アイスとチーズとクラッカーで食べた 全然減らない